読み手を意識して昔話を翻訳してみよう

アクティビティのねらい・概要

ねらい

このアクティビティでは、海外の昔話を日本語に翻訳します。

誰に向けて何のために翻訳するかによって、どのような言葉選びをするか内省できる活動になっています。

概要

目標
  • 読み手や目的に応じたことば選び(文体、表現)で翻訳ができる
  • 翻訳の意図を説明した前書きが書ける
学生の日本語力 中級(B1)以上
その他の言語力 事前課題で使用する英語等が理解できるレベル(話せなくてOK)
所要時間 2時間
おすすめクラス 読書が好きな学生・成年向けの語学クラスで、考えさせるタスクとして取り入れるのがおすすめ!

手順

ロードマップ

1.事前準備

2. ウォーミングアップ

  • 【学生】グループ(3~4人)ごとに今回の「翻訳の読み手」=「誰に向けて翻訳するか」を決めます。(教師が指定してもよいです)
    ※例)子ども向け、劇の脚本用、原文の表現を生かす、詩のような形式にする、など
  • 【教師】スキーマ活性化のために、各読み手にふさわしい翻訳のイメージを簡単に考える時間を取ってもいいです。

3. タスクの提示:昔話を翻訳する

  • 【教師】以下のタスクを提示します。

読み手を意識して昔話を翻訳しましょう。また、この翻訳に至った経緯を説明した前書きも書いてください。

※前書きは、既に出版されている本から見本を探してもいいです。

  • 【教師】 学生が書いた翻訳のコピー(最初の一段落程度でよい)をクラスに配ります。

  • 【学生】 翻訳のコピーを読んで、考えたことを話し合います。
  1. どんなお話ですか。
  2. 文体や表現から、どんな読み手に向けて翻訳されたものだと思いますか。
  3. 読み手の対象に向けた翻訳は成功したと思いますか。根拠を挙げながら説明してください。

5. 宿題

  • 【学生】自分やクラスメイトが取り組んだ昔話を、異なる読み手宛に書き換えます。さらにコメンタリーの提出もします。

※自分の翻訳としてその表現を使った理由も書きます。翻訳するだけでなく理由も書かせることで、ことばの選択について考えさせることができます。

参考文献

  • Davies, M. G. (2004). Multiple voices in the translation classroom: Activities, tasks and projects (Vol. 54). John Benjamins Publishing.

こんな先生・活動にお勧めです!
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学生に「考えるタスク」を与えたいと考えている先生にお勧めです。この活動の目的は、Harold Lasswellの「誰がどんな考えのもと誰に向けてどんな技法を使って何を言ったか」という有名な問いに基づいて、聞き手を意識した翻訳をすることです。この問いはのちにKatharina ReissやChristiane Nordによって「いつ、どこで、なぜ、どのように」という要素を加えられながら発展してきたといいます。

翻訳では目的や読み手について考えることが必要と言われていますが、ただ文を翻訳するのではなく、「いつ、どこで、なぜ、どのように」という問いを常に考えて、意図する言葉選びをする練習になります。