複数の言語で履歴書を書いてみよう:履歴書に見る言語や文化の違い

アクティビティのねらい・概要

ねらい

このアクティビティでは、異なる言語で履歴書を書くことで、言語や文化の類似点や相違点について考えます。

概要

目標
  • 地域・言語による履歴書の類似点・相違点が意識できる。
  • 各言語の履歴書の形式の特性を理解した上で、母語(または自分の選んだその他の言語)・日本語で履歴書を書くことができる。
学生の日本語力 中級後半(B2)以上
その他の言語力
  • 教師は学生が母語等で書いたものが読めて理解できることが望ましいが必須ではない(話せなくてOK)
  • 母語が多様なクラスな場合、学生は他の学生の書いたものが読めて理解できることが望ましいが必須ではない(話せなくてOK)

所要時間

3時間
おすすめクラス 日本で就職を考えている学生がいるときにおすすめ!

手順

ロードマップ

1.事前準備

  • 【学生】「自分の国・地域で就職しようと活動しているので、その地域で必要な言語で履歴書を作成する」というタスクで、母語(または自分の選んだその他の言語)で履歴書を作成します(書式は自分の国・地域で使われているものを使用します)。
  • 【教師】日本語での履歴書のテンプレートや記載例を準備しておきます。

履歴書のテンプレート(厚生労働省様式例)は下記ボタンからもダウンロードできます。

履歴書テンプレート(Word)

履歴書テンプレート(Excel)

履歴書テンプレート(PDF)

  • 【教師】日本語での履歴書の書き方のポイントを整理しておきます。
    ※教師の代わりに、学生が調べて、クラスで紹介してもいいです。学生の文化背景が異なる場合は、それぞれの国・地域での就職活動事情や手順を説明してもらってもいいでしょう。

履歴書の例と書き方のポイントの参考です。

【履歴書の例】

【履歴書の書き方のポイント】

  1. 【日付】
    • 記入日ではなく、提出日を記入します。
    • 年度の表記は西暦(20XX年)か、和暦(令和X年)をそろえます。
  2. 【ふりがな】
    • 「フリガナ」と書いてあったらカタカナで、「ふりがな」と書いてあったらひらがなで書きます。
  3. 【氏名】
    • 漢字またはアルファベットで書きます。姓と名の間は空けます。
    • アルファベット表記はパスポートと同じ表記にします。
    • ファミリーネームを前、ファーストネームを後ろに書きます。
  4. 【生年月日】
    • 記入日ではなく、提出日の満年齢を書きます。
  5. 【住所】
    • 「郵便番号」「都道府県」「番地」「建物名」「部屋番号」を省略せずに書きます。
    • ふりがなは数字やカタカナの上にはつけなくてもいいです。
  6. 【写真】
    • 履歴書用のサイズ(縦4cm、横3cm)を守ります。
    • 写真を貼り付ける場合は裏に名前を書いておきます。
    • 髪型や服装は清潔感のあるもので、スーツが原則です。
    • 体と顔は正面を向き、胸から上の写真を撮ります。基本は歯を見せて笑いません。
  7. 【学歴】
    • 時系列で古い順に、高校から書きます。
    • 学校名は正式名称で書きます。大学・大学院の場合は、学部・学科も書きます。
    • 「入学」と「卒業」はセットで書き、「入学」「卒業」の字の位置を揃えます。
    • 途中退学なら「中退」と書きます。
    • 海外の学校の場合などは、国名・州名・都市名をかっこで書いてもいいでしょう。
    • 在学中の場合は「○年○月 卒業見込」または「現在に至る」と書きます。
  8. 【職歴】
    • 時系列で古い順に、高校・大学卒業後の職歴を書きます。
    • インターンシップやアルバイト経験は必要に応じて書きます。特に、日本での仕事は、アルバイトでも書いておくといいかもしれません。
    • 会社名は正式名称で書きます。「株式会社」を(株)と省略しません。
    • 「入社」と「退社」はセットで書きます。
    • 職歴が全くない場合は、<職歴>の下の行に「なし」と書きます。
    • 職歴を書き終わったら、最後に「以上」と書きます。
  9. 【免許・資格】
    • 時系列で古い順に書きます。
    • 正式名称で書きます。
    • 運転免許などは「取得」、日本語能力試験などは「合格」と書きます。
    • 試験を受け、結果発表を待っている場合は、「結果待ち」と書いておきます。
    • 現在勉強中の資格も書いておくといいです。
  10. 【特技など】
    • 特技や趣味は、単に「読書」「音楽」「写真」など書くだけでなく、具体的な情報を含めましょう(面接の話のきっかけにもなります)。
    • 「特になし」は印象がよくないので、必ず書きましょう。
  11. 【その他】
    • 空欄はなるべく作らないようにしましょう(空欄があると、書き忘れたと思われてしまいます。職歴や免許・資格がない場合は「なし」と記入します。)。
    • 経歴にできるだけブランクを作らないようにしましょう。ブランクがあると、空いている期間に何をしたか疑問に思われます。ブランクがある場合は、面接で聞かれたときに説明できるようにしましょう。
    • 郵送する場合は、書類を汚したり、修正テープを使ったりしないようにしましょう。手書きで書く場合は、書き間違えたら、新しい用紙を使うようにします。
    • 控えをとっておきましょう。履歴書は面接時の資料となるものです。何を書いたか忘れないようにしましょう。

小島美智子(監修)(2018年)『伸ばす!就職能力・ビジネス日本語力』国書刊行会, p. 45, 47を一部加筆改変して使用

2. ペア・グループワーク:履歴書の比較

  • 【学生】ペア・グループで自分の書いてきた母語(または自分の選んだその他の言語)の履歴書を見せ合いながら、母語等の履歴書の形式や内容、書くときのポイントなど、履歴書について知っていることをブレインストーミングします。
  • 【学生】ブレインストーミングで出てきたポイントを書き出します。
  • 【教師】クラス全体で意見をまとめて、大切な点はリストにしておきます。
  • 【学生】話し合いの内容をもとに、自分の母語等の履歴書を書き直します(※このステップは宿題にしてもいいです)。

3. 日本語の履歴書の提示

  • 【教師】日本語の履歴書の見本を見せます。形式・内容・書くときのポイントを簡単に説明します。
  • 【学生】日本語の履歴書と母語等の履歴書との共通点や相違点について話し合い、書き出します。時間があれば、文化によって、異なる自己アピールの仕方や履歴書・面接で期待されることなどについても話し合います。
  • 【教師】クラス全体で意見をまとめます。大切なポイントはリストにしておきます。

4. 日本語の履歴書の作成

  • 【教師】以下のタスクを提示します。

日本企業に就職しようと活動をしています。応募書類の一部として、履歴書を提出しなければなりません。履歴書を書きましょう。

  • 【教師】履歴書のテンプレートを配布します。
  • 【学生】各自が日本語の履歴書を作成します(※このステップは宿題にしてもいいです)。

5. ペア・グループワーク:日本語の履歴書のディスカッション

  • 【学生】学生同士でそれぞれの履歴書を交換し、添削します。添削は、2や3の話し合いででてきたリストに沿って行います。
  • 【学生】もらったコメントをもとに、履歴書を書き直し、最終版を作成します。
  • 【教師】最終的なチェックは教師がするといいでしょう。

6. オプショナルの課題

  • 【学生】履歴書をもとに、実際に面接の練習をしてみてもいいでしょう。
    ※日本語の履歴書をみながら、実際の面接は英語で説明するなどということも可能です。

参考文献

  • Davies, M. G. (2004). Multiple voices in the translation classroom: Activities, tasks and projects (Vol. 54). John Benjamins Publishing. p.59-61
  • 小島美智子(監修)植木香・木下由紀子・藤井美音子(著)(2018年)『伸ばす!就職能力・ビジネス日本語力』国書刊行会

こんな先生・活動にお勧めです!
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日本で就職を考えている学生がいるクラスで、おすすめです。
日本で就職活動をする学生には、就職活動指導や面接練習などと組み合わせて使うといいと思います。