アクティビティのねらい・概要
ねらい
このアクティビティは、自動翻訳ツールをうまく活用するための活動です。
この活動を通して、それぞれの自動翻訳ツールの長所・短所について考えられます。
概要
目標 |
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学生の日本語力 | 初級(A2)以上 |
その他の言語力 |
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所要時間 |
40分 |
おすすめクラス | コースの途中で、自動翻訳ツールについて考える時間を設けてみるのがおすすめ! |
手順
1.事前準備
- 【教師】2つのテキストを選びます。5~6行くらいのもので大丈夫です。①②どちらも自動翻訳にかけるので、デジタルのものがいいです。
- 学生のレベルかそれより少し上のレベルの日本語のテキスト
※使用している教科書から選んでも、新聞や雑誌などから選んでもよいです。 - 学生の母語(または媒介語)で書かれた短めのテキスト
- 学生のレベルかそれより少し上のレベルの日本語のテキスト
- 【教師】(教室にネット環境がない場合)前もって複数の自動翻訳ツールを使って上記①②のテキストを翻訳しておきます。翻訳したものは保存して、ハンドアウトにしておきます。
無料の自動翻訳ツールは以下のようなものがあります(2022年9月現在)。
- Google Translation (https://translate.google.com/)
- DeepL(http://deepl.com/)
- みんなの自動翻訳@TexTra®(https://mt-auto-minhon-mlt.ucri.jgn-x.jp/)(*登録が必要)
2. 翻訳ツールの紹介
- 【教師】自動翻訳ツールを使ってみると伝え、配ったハンドアウトに載っている日本語のテキストを手早く読ませます。疑問点があればこの段階で解決しておきます。
- 【教師】学生にそのテキストの複数の翻訳を見せ、何の自動翻訳ツールを使ったか説明します。使用した自動翻訳ツールのウェブサイトリンクを教えます。
3. 日本語→母語の翻訳についてのディスカッション
- 【教師】日本語テキストの翻訳を見て、翻訳上の問題点に注目させます。また、自動翻訳ツールでは適切に翻訳されない(誤訳を生む)可能性があるものは何かをペアで話し合わせます。
- 【学生】ペアで話した後、クラス全体で意見を共有します。
- 【教師】学生の意見をまとめた後、以下のような例を説明します。
適切に翻訳されない(誤訳を生む)可能性があるものの例としては、以下のようなものがあります。
- 複数の意味を持つ言葉:多義語の場合、適切な訳が選ばれないことがあります。
- 新しい言葉やあまり使われない言葉:自動翻訳は学習した対訳データをもとに訳を作ります。学習したデータにない語は、別の意味に訳すことがあります。
- 代名詞:その代名詞が何を指すのか認識できないこともあります。
- 複文:文が長ければ長いほど、訳が抜けたりして間違えることがあります。
- 文化的背景知識を必要とするもの:日本人にとって「菊の花」は皇室を連想させるなどは適切に翻訳されないことがあります。
- 文体:文の硬さやカジュアルさは反映しません。
(Kerr (2014) 、坂西・山田 (2020) を参考に作成)
4. 母語→日本語の翻訳についてのディスカッション
- 【教師】学生の母語で書かれたテキストを手早く読ませてから、それを日本語に翻訳したものを複数見せます。
- 【学生】ペアでこの翻訳の問題点を考えます。
※あまり時間をかけなくていいです。むしろ、自分が学習している言語の場合は、問題点を見逃しうることを知るのが、この活動のポイントです。
- 【教師】クラス全体で振り返り、学生が見落としていた箇所を示します。
5. 自動翻訳ツールについてのディスカッション
- 【教師】自動翻訳ツールはどういう場面で使うのが効果的か、使うときの注意点は何かを話し合わせます。
- 【学生】ペアで話した後、クラス全体で意見を共有します。
- 【教師】学生の意見をまとめ、自動翻訳ツールを使うときのポイントを伝えます。
ポイントの例としては以下のようなものがあります。
- 自動翻訳ツールはテキストの大意をつかむには便利です。
- 母語に翻訳されたものを読めば、誤訳や不自然な文も見つけやすいです。日本語に翻訳されたものを読んで判断するほうがはるかに難しいです。
- 文体や細かいニュアンス(終助詞の使用の有無によるニュアンスの違いなど)などは表現されていないことがあります。
- 特に多義語や新しい言葉、長い文などには、誤訳がある可能性があるので注意が必要です。
参考文献
- Kerr, P. (2014). Translation and own-language activities. Cambridge University Press.
- 坂西優・山田優(2020)「自動翻訳大全 終わらない英語の仕事が5分で片づく超英語術」三才ブックス
こんな先生・活動にお勧めです!
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自動翻訳ツールをどう使っていけばいいか、学生と一緒に考えたい先生におすすめです。
自動翻訳ツールを使う学生は多いと思います。年々、自動翻訳の精度もあがっていますが、うまく活用していくためには注意も必要になります。クラスで使用について振り返る時間を作ってみてはいかがでしょうか。
初中級レベル以上のクラスで取り入れられます。ただし、クラス内に共通の媒介語があることが条件になります。