アクティビティのねらい・概要
ねらい
このアクティビティは、翻訳とは何かを考えてみる活動です。
この活動を通して、一口に翻訳といってもいろいろな定義があることを知ることができます。
概要
目標 |
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学生の日本語力 | 問わない |
その他の言語力 |
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所要時間 |
30分 |
おすすめクラス | 翻訳をする前にブレインストーミングとして取り入れるのがおすすめ! |
手順
1.事前準備
- 【教師】様々な学者や翻訳家による翻訳の定義を集めて、ハンドアウトにまとめておきます。
翻訳の定義の例としては以下のようなものがあります。
- J. C. Catford, A Linguistic Theory of Translation (1965)
[Translation is] the replacement of textual material in one language by equivalent textual material in another language.
- E. A. Nida y C. R. Taber, The Theory and Practice of Translation (1969)
Translation consists in reproducing in the receptor language the closest natural equivalent of the source-language message, the first in terms of meaning and secondly in terms of style.
- Amparo Hurtado Albir, Traducción y traductología (2011)
An interpretative and communicative process consisting of the reformulation of a text with the means of another language that takes place in a social context and with a specific purpose.
- Basil Hatim & Jeremy Munday, Translation: An Advanced Resource Book (2004)
Our threefold definition of the ambit of translation will thus be:- The process of transferring a written text from source language to target culture, conducted by a translator, or translators, in a specific socio-cultural context.
- The written product, or target text, which results from that process and which functions in the socio-cultural context of the target language.
- The cognitive, linguistic, visual, cultural and ideological phenomena which are an integral part of 1 and 2.
- 鳥飼玖美子(編)「よくわかる翻訳通訳学」(2013)
「翻訳」とは、一般的には「ある言語テクストを別の言語に移し換える」ことで、訳すという行為や過程を示すこともあれば、訳出物や作品を指すこともあります。
2. クラスディスカッション
- 【学生】「翻訳とは何か」についてペアで考え、アイデアを書き出します。
- 【学生】ペアで出たアイデアをクラス全体で共有します。
- 【教師】教師が翻訳の定義をいくつか示します。学生は自分たちが考えたものと読み比べながら、翻訳という行為を特徴づけている要素を書き出します。
教師は以下のようなことに言及してもいいでしょう。
- 日本語の「翻訳」と英語の”translation”は完全に同じ意味ではありません。
- 日本語の「翻訳」は、文字で書かれた文章を訳すことを意味します。
- 英語の”translation”は話し言葉と書き言葉の両方を意味します。
- 言語学者のヤコブソンは「言語内翻訳(intralingual translation)」「言語間翻訳(interlingual translation)」「記号法間翻訳(intersemiotic translation)」という3つの翻訳の種類をあげています。
- 「言語内翻訳」は、ニュースの「やさしい日本語」への書き換えなど、同じ言語内で別の言語に訳すことです。
- 「言語間翻訳」は、ある言語から別の言語に訳すことです。
- 「記号法間翻訳」は、「小説をドラマにする」、「詩を絵画にする」など、言語を言語以外の音楽、映画、絵画、踊りなどの別のもので表現することです。
3. 任意のアクティビティ
- 時間があれば、以下のようなことを話し合うこともできます。
- 原文・訳文で今まで違和感を覚えたものについて、例を挙げてください。
- それを基に、翻訳できないものにはどんなものがあるかを説明してください。
教師は『翻訳できない世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース著、前田 まゆみ 訳、2016年、創元社)を紹介することもできます。
この本では、世界中の言語の「翻訳できない言葉」を、かわいいイラストと解説で紹介しています。
参考文献
- Carreres, Á., Noriega-Sánchez, M., & Calduch, C. (2018). Mundos en palabras: Learning advanced Spanish through translation. Routledge.
- 野原佳代子(2014). 『ディスカッションから学ぶ翻訳学 トランスレーション・スタディーズ入門』三省堂.
こんな先生・活動にお勧めです!
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コース前のオリエンテーションや翻訳プロジェクトの前に、ブレインストーミングとして取り入れるのがお薦めです。
ディスカッションを日本語以外の言語で行うことで、初級レベルでも行うことができます。