アクティビティのねらい・概要
ねらい
このアクティビティは、日本語の物語を様々な言語に翻訳する活動です。
文字通り翻訳するのではなく、日本語の物語を読んだときの気持ちの再現を目標にすることで、感情を伝えるためにどう翻訳すればいいかを考えることができます。
概要
目標 |
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学生の日本語力 | 中級(B1)以上 |
その他の言語力 |
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所要時間 | 3時間 |
おすすめクラス | プロジェクトとして入れるのがおすすめ。 |
手順
ロードマップ
1.事前準備
- 【教師】多言語化する予定の絵本をウェブサイトで探しておきます。また、日本語を消した絵のみのバージョンを準備しておきます。
2023年4月現在、無料でアクセスできる絵本のサイトには以下のようなものがあります。
- 福娘童話集「絵本・アニメ紙芝居」
日本・世界の民話・物語が紹介されています。絵のみが記載された「イラスト版」もあり、絵のみのバージョンを準備する際も便利です。
- 絵本ひろば
オリジナルの絵本が多数紹介されています。
2. タスクの紹介
- 【教師】以下のタスクを紹介します。
絵本を多言語化してほしいと頼まれました。皆さんの翻訳は、ウェブサイトに日本語の原文とともに記載されます。
- 【学生】どの言語で翻訳したいかを考えます。自分の得意な言語で翻訳するのがいいでしょう。
- 【教師】既に多言語化されている物語を紹介し、完成版のイメージを持たせます。
2023年4月現在、多言語絵本のサイトには以下のようなものがあります。
- 多言語絵本の会 Rainbow
外国につながる子どもの母語保持のためと、日本語で育つ子どもの外国語への関心拡大のために活動を行っている団体です。2020年現在で、日本語の原作21作が、28の言語に翻訳されています。 - 福娘童話集
「1. 事前準備」でも紹介したサイトです。既に多言語化されている絵本が複数あります。
3. 絵本の紹介・内容理解
- 【教師】絵本のタイトルを紹介し、最初にことばを消した絵のみのバージョンを見せます。
- 【学生】ペア・グループにわかれて、絵のみを頼りに、どんな話かを予測します。
- 【教師】学生の意見をまとめます。
- 【教師】日本語の入ったバージョンを見せます。日本語の意味を確認します。
- 【学生】読んだ後、付箋などを使って、この絵本を読んで感じた感情や思いなどを表す「感情キーワード」を書きだします。「面白い」「悲しい」「笑った」「考えさせられる」などなんでもいいです。
- 【教師】学生が書きだした「感情キーワード」を、似ているキーワードをカテゴリー化するなどして、まとめます。
- 【教師】翻訳する際は、ただ翻訳をするのでなく、これらのキーワードを引き出すような翻訳が望ましいと伝えます。
4.翻訳作業・グループワーク
- 【学生】自分の選んだ言語で、この本を翻訳します。
- 【教師】学生の家族・知り合いに翻訳を読んでもらい、どういう気持ちになったかを聞いてみるように促します。「2. 絵本の紹介・内容理解」で出てきた「感情キーワード」と、同じ感情がでてくるような訳になっているかを確認します。
- 【学生】同じ言語で訳した学生がいた場合、翻訳を比較しながら、翻訳で難しかった点や工夫した点を話し合います。同じ言語で訳した学生がいない場合は、翻訳を見せながら、難しかった点・工夫した点を述べて、発表し合います。
- 【教師】言語間で共通の難しい点などがあれば、共有します。
- 【学生】翻訳を書きなおして、最終版を作成します。また、難しかった点・工夫した点をまとめてコメンタリーとして提出します。
参考文献
- Ardizzone, S., & Holmes, S. (2019). Translators in schools: Valuing pupils’ linguistic skills. In The Routledge Handbook of translation and education (pp. 109-124). Routledge.
こんな先生・活動にお勧めです!
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母語の多様なクラスで実施するのにおすすめです。
「感情を伝えるにはどうすればいいか」という観点から翻訳することで、読み手を意識して翻訳する力を磨くこともできます。この活動を通して、自分の得意な言語のみならず、自分の知らない様々な言語に触れることもできます。
学期末のプロジェクトとして、学生の翻訳をまとめて、クラス内で多言語の本を作成することもできます。