アクティビティのねらい・概要
ねらい
このアクティビティでは、文化に特有の概念(文化的要素)をどう翻訳するかを考えます。
文化を翻訳する際の様々な翻訳方法や、読み手に合わせた適切な翻訳を学べる活動になっています。
概要
目標 |
|
学生の日本語力 |
中級(B1)以上 |
その他の言語力 |
中級後半(B2)以上の媒介語が必要 |
所要時間 | 2時間 |
おすすめクラス | 大学生・成年向けの語学クラスで、考えさせるタスクとして取り入れるのがおすすめ。 |
手順
ロードマップ
1.事前準備
- 【教師】授業で扱う小説、マンガ、映画を準備します。小説、マンガ、映画は日本特有の文化的要素(「たたみ」、「こいのぼり」、「コンビニ」、「おにぎり」など)が多く入っているものを選びます。
文化的要素が多い小説、マンガ、映画として以下のものがあげられます。
- (小説)『コンビニ人間(村田沙耶香(著))』
- (マンガ)『鬼滅の刃』
- (映画)『千と千尋の神隠し』、『おくりびと』
- 学生のレベルに合わせて、選んだ小説等の中でクラスで使用する箇所を決めます。文化的要素が4~5つ程入っていることが望ましいです。
2. 本文の提示
- 【教師】選んだ小説等について、学生にその内容を簡単に説明します。
- 【教師】事前に選んだ箇所を配布して、意味を確認します。
※映画の場合は、選んだ場面を視聴し、学生にその場面のスクリプトを配布します。
3. 文化的要素の翻訳
- 【学生】配布された箇所の中で、日本特有の文化的要素に線を引きます。
- 【学生】以下のような表を作り、①文化を書き換える方法(=自分の文化に合わせて変える方法)と②直訳する方法で、下線を引いた箇所を訳します。
文化的要素 | ①文化を書き換える方法 | ②直訳 |
---|---|---|
ミシュラン | AA Guide to Hotels and Restaurants | The Michelin Guide |
石垣島 | Isle of Wight | Isle of Ishigaki |
湘南 | Rhyl | Shonan |
北の国から | Eastenders | Kita no kuni kara / From the North |
- 【学生】グループになり、自分たちの翻訳を見せ合います。
4. ディスカッション
- 【学生】グループになり、以下の場合だと、①文化を書き換える方法と②直訳する方法のどちらがいいかを考えます。また、注釈をつけるなど、その他工夫したほうがいいことがあれば話し合います。
- 日本語学習者向けの教材として出版する場合
- 出版物として一般の人に売り出す場合
- 海外のJapan Festivalのイベントで紹介する場合(来場者は日本に興味がある人。日本語が必ずしもわかるわけではない)
- 【教師】グループで話し合ったことをクラス全体で共有します。
参考文献
- Davies, M. G. (2004). Multiple voices in the translation classroom: Activities, tasks and projects (Vol. 54). John Benjamins Publishing, p. 94-96.
- Lee, V. & Gyogi, E. (2018): Cultural-Specific Lexis for Intercultural Communication: Case Studies From Two Different Classrooms, Journal of Language, Identity & Education, DOI: 10.1080/15348458.2017.1418357
こんな先生・活動にお勧めです!
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学生に「考えるタスク」を与えたいと考えている先生にお勧めです。この活動の目的は、文化的要素をどう翻訳するかを考えることです。文化を書き換える方法と直訳を考えることで、文化的要素を翻訳する手法を学ぶことができます。また、読み手によってどの翻訳が適切かを場面ごとに考えることで、言葉選びを意識する練習にもなります。