アクティビティのねらい・概要
ねらい
このアクティビティは、新聞の皇室報道における敬語の使用の違いに着目したアクティビティです。
翻訳を通して自分のことばの選択と、それがもたらす効果について考えられます。
概要
目標 |
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学生の日本語力 | 中級後半(B2)以上 |
その他の言語力 | 新聞が読めて理解できるレベル(話せなくてOK) |
所要時間 |
2時間 |
おすすめクラス | 大学生・成年向けの語学クラスで、考えさせるタスクとして取り入れるのがおすすめ! |
手順
ロードマップ
1.事前課題
- 【教師】読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞など、3つのメディアを選びます。
どの新聞を使用するかは、電子版へのアクセスの有無等の状況に応じて変更可能です。
ただ、皇室報道の敬語使用の有無がポイントです。なので、敬語を使用しているメディアと敬語を使用していないメディアのどちらも含める必要があります。 また、英語(や他の媒介語)でも同じニュースが報道されていることが望ましいです。
2024年1月現在、皇室報道における敬語使用の有無は以下のとおりです。
- 敬語を使用している新聞:日本経済新聞、読売新聞、産経新聞
- 敬語を使用していない新聞:朝日新聞、毎日新聞
読み比べの記事の例
- 日本経済新聞『天皇陛下「若い世代の交流期待」 あすインドネシアへ出発』2023年6月16日
- 読売新聞『両陛下がインドネシアへ出発、笑顔で機内に…親善目的の外国訪問は即位後初』2023年6月17日
- 産経新聞『両陛下、インドネシアにご出発』2023年6月17日
- 朝日新聞『(天皇、皇后両陛下 令和初の親善訪問)インドネシア、友好のコイ 上皇さま提案、両国の品種交配』2023年6月17日
- 毎日新聞『両陛下がインドネシアに出発 国際親善目的の外国訪問は即位後初』2023年6月17日
- 【学生】教師が選んだ新聞3社の特徴(読者層・政治的立場)を調べてきます。
2. ウォーミングアップ
- 【学生】事前課題として調べてきた3社の特徴をクラスで共有します。
- 【教師】最近の皇室報道(例:「天皇陛下、〇〇に訪問」など)について、3社の新聞記事を見せます。
- 【教師】以下のように、天皇陛下の行為がどのような形の動詞で表現されているか尋ね、リストアップさせます。
- 【学生】以下の3点について話し合います。
- どんなことに気が付いたか
- なぜそのような差異があるのか
- どのように英語(又は他の媒介語)に翻訳できるか
実際に出た回答として、以下があります。
- ①について:使用語彙は同じだが、新聞社によって敬語を使うかが異なる
- ②について:天皇に対する見方が新聞社によって異なる
- ③について:kindlyという副詞を使用する、Her Majesty the Queenなど敬称を変える
※「何を言うか」ではなく「どう言うか」に着目させるのがポイントです。敬語の使用については、以下のような図を出すとわかりやすいです。
3. タスクの提示
- 【学生】ウォーミングアップで使用したのと同じ出来事についての英語(その他の媒介語)のニュース(BBCなど)を読み、そのメディアの特徴(読者層や政治的立場)について話し合います。
- 【教師】以下のタスクを提示します。
あなたは、今、日本にいます。英語で皇室報道のニュースを読んでいたら、次の人に何を読んでいるのかと聞かれました。ニュースの内容を日本語に翻訳して説明します。
- 佐藤さん(60歳、ホストファザー)
- リーさん(25歳、韓国からの留学生、寮の友達)
- さくらさん(20歳、日本の大学生、サークルの友達)
- 【学生】まず、一人でどういうか考えます。
- 【教師】以下の点を考えながら、ペアで話し合い、いくつかのペアに発表してもらいます。
- 天皇をどのように呼ぶか
- 天皇の行為に敬語を使用するか、使うならどのぐらい使用するか、またそうする理由
- 話す相手によって話し方を変えるか、またその理由
以下は、実際に出た意見の例です。
4. 宿題
- 【教師】別の皇室報道の英語(またはその他の媒介語)ニュースを渡します。クラスで使用した同じタスクを与え、翻訳とコメンタリーの提出を宿題とします。
※翻訳するだけでなく、自分がそのように答えた理由も書きます。翻訳だけでなく理由も書かせることで、ことばの選択について考えさせることができます。
参考文献
- Gyogi, E. (2015). Voices from the Japanese language classroom: Honorifics do far more than politeness, in Barbara Pizziconi, & Miriam A. Locher (eds.), Teaching and Learning (Im)politeness (pp. 53-78). Berlin: Mouton de Gruyter.
こんな先生・活動にお勧めです!
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学生に「考えるタスク」を与えたいと思っている先生にお薦めです。
学生はこのアクティビティで、敬語の使用は敬意を表すためだけでなく、聞き手が誰なのかにも深く関係することを理解できます。また、ネイティブスピーカーの話し方をただ真似するのではなく、学生自身がどんな言葉遣いをするかを考えることができます。