アクティビティのねらい・概要
ねらい
この活動では、日本語クラスで行われているロールプレイをバイリンガル版にするものです。
ロールプレイでは、一人の学生が通訳(仲介者)となり、残りの2人をつなぐ役割をします。
ロールプレイを通して、言語間を仲介する際のストラテジーなどを学ぶことができます。
概要
目標 |
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学生の日本語力 | 初級(A1)以上 |
その他の言語力 | 中級(B1)以上の媒介語力が望ましい |
所要時間 | 15分 |
おすすめクラス | 初級から上級まで導入できます。既存の教材を活用して行うのがおすすめ。 |
手順
1.事前準備
- 【教師】既存のロールプレイの中で、実生活で学生が、日本語とその他の言語を使う必要がでてきそうな場面をピックアップします。
例えば、日本で起こる場面としては以下のような場面が考えられます。
- (レストランで)日本語のできない友達と一緒にレストランに行く。メニューは日本語版しかないので、メニューを説明して、友達の分も注文する。
- (病院で)日本語のできない友達の体調が悪いので、一緒に病院に連れて行く。友達の体調を伝えながら、医者の質問に答える。
- (ホームステイ先で)日本語のできない家族が日本に来た。今住んでいる町を案内したい。でも、どこを案内したらいいかわからないので、家族の希望を聞いたうえで、ホストファミリーに聞く。
- 【教師】既存のロールカードを以下の例のようにバイリンガル版にアレンジします。
元のロールカード
【ロールカードA】
時間:午後1時
場所:レストラン
状況:あなたは友だちと二人で昼ごはんを食べに来ました。席に座ってメニューを見ています。
タスク:食べ物と飲み物を注文してください。
【ロールカードB&C】
時間:午後1時
場所:レストラン
状況:あなたはレストランの店員です。お客さんが2人来て席に座ってメニューを見ています。
タスク:お客さんのところへ行って注文を聞いてください。
(小池真理 ・中川道子・宮崎聡子 ・平塚真理(著)『改訂版 聞く・考える・話す 留学生のための初級にほんご会話』スリーエーネットワーク L4-1 より引用)
アレンジ例
【ロールカードA】
時間:午後1時
場所:レストラン
状況:あなたは日本語のわからない友だちと二人で昼ごはんを食べに来ました。席に座ってメニューを見ています。
タスク:食べ物と飲み物を注文してください。
【ロールカードB】
時間:午後1時
場所:レストラン
状況:あなたはレストランの店員です。お客さんが2人来て席に座ってメニューを見ています。
タスク:お客さんのところへ行って注文を聞いてください。
【ロールカードC】
時間:午後1時
場所:レストラン
状況:あなたは日本語がわかりません。友だちと二人で昼ごはんを食べに来ました。メニューも読めません。
タスク:友達に聞いて、注文したい食べ物と飲み物を決めてください。
2.ロールプレイ
- 【教師】必要に応じて適宜ロールプレイで語彙・必要な表現などを紹介します。
- 【教師】学生を3人のグループに分け、ロールカードを配布します。ロールカードAをもらった学生には、日本語が話せない友達と、店員を仲介すると伝えます。ロールカードCをもらった学生には、母語(またはその他の媒介語)で話すようにと伝えます。
- 【学生】ロールプレイを行います。
- 【教師】ロールプレイが終わったら、感想や難しいことがあったかと聞きます。また、仲介をする際のストラテジーなどを共有します。
仲介ストラテジーの例としては以下のようなものがあります。
- 日本語のわからない友達のニーズを聞いておく。
- すべてを訳そうとしない。大切なポイントを伝える。
- 誤解を生じさせないように、確認をこまめにとるようにする。
- ジェスチャーや、メモなども必要に応じて使う。
- 伝えられないことば(概念)がある場合は、オンラインの辞書で調べるだけでなく、意味を詳しく説明したり、例を出したりして、ことばができるだけ的確に伝わるようにする。
- 【学生】役を変えて、もう一度ロールプレイを行います。
参考文献
- Kerr, P. (2014). Translation and own-language activities. Cambridge University Press. p. 115.
学生は、日本語と他の言語を仲介しなければならない場面が多々あります。
既存の教材のロールプレイをアレンジすることによって、比較的簡単に日常で起こりうる場面での仲介の練習ができます。
どのレベルでも導入可能ですので、ロールプレイの一つの選択肢として導入してみるのがおすすめです。