レシピの翻訳を通して、オノマトペについて考えよう

アクティビティのねらい・概要

ねらい

このアクティビティは、レシピの翻訳を通してオノマトペについて学ぶアクティビティです。

この活動では、母語(又は自分の知っている言語)のレシピの比較や翻訳を通して、オノマトペがレシピでどのような効果を発揮するかを学んだうえで、自分でもオノマトペを産出することができます。

概要

目的
  • 日本語のレシピでのオノマトペの役割・効果について理解できる。
  • レシピというジャンルに適した言語表現・スタイルについて、日本語と他の言語を比較できる。
  • 他の言語のレシピを、必要に応じてオノマトペを効果的に使いながら、日本語に翻訳ができる。
学生の日本語力 中級後半(B2)以上
その他の言語力
  • 教師・学生ともにクラスで使用する英語版のレシピを理解できる力が必要。
  • 教師は学生の翻訳の内容がわかることが望ましいが、必須ではない。
  • 学生は、同じ母語の学生が各2人いることが望ましいが、必須ではない。

所要時間

3時間
おすすめクラス 大学生・成年向けの語学クラスで、考えさせるタスクとして取り入れるのがおすすめ!

手順

ロードマップ

1.事前課題

  • 【教師】レシピサイトから、同じ料理(親子丼、お好み焼き等)の英語・日本語のレシピを2つずつ選んでおきます。

2022年1月現在、以下のようなレシピサイトがあります。

  • 日本語:CookpadKurashiruなど
    (※日本語のレシピのどちらか一つはオノマトペが複数含まれているものを選びます)
  • 英語:AllrecipesNorecipesなど

2. レシピの分析              

  • 【教師】同じ料理のレシピの英日のレシピ2つずつを配布します。
  • 【学生】レシピの構造を分析します。以下のような表を使って、それぞれのレシピに含まれる内容をチェックしていきます。
  • 【学生】以下の点についても話し合います。
    • 自分がその料理を作るとき、英語版ではどちらのレシピを使いたいですか。どうしてですか。
    • 自分がその料理を作るとき、日本語版ではどちらのレシピを使いたいですか。どうしてですか。
    • 英語・日本語以外の自分が知っていることばのレシピの構造も似ていますか。それとも違うところがありますか。
  • 【教師】学生の話し合いの内容をクラス全体でまとめます。
  • 【学生】日本語のレシピの語彙表現を分析します。日本語のレシピのうちの1つを見ながら、以下の質問を考えます。
    • レシピはよくオノマトペがよく使われるジャンルの一つです。レシピを見て、オノマトペを探しましょう。いくつありましたか。オノマトペはレシピのどこで(タイトル、コツ・ポイント、作り方など)使われていますか。
    • 英語やあなたの知っているこどばでも、レシピでオノマトペを使いますか?
    • 「作り方」で、どんな動詞のフォームを使っていますか。(「~てください」「~ましょう」「~ます」など)。英語やあなたの知っていることばではどんな動詞のフォームを使いますか。

  • 【教師】レシピに頻出するオノマトペをいくつか紹介します。

以下は例です。

  • 以下のデザートに、a~cのどのオノマトペがよく使われますか(ヒント:見た目や歯ざわりに関係するオノマトペです。)

a. さくさく b. もちもち c. しっとり

  • 以下の材料に、aとbのどのオノマトペがよく使われますか(ヒント:味に関係するオノマトペです。

a. こってり b. さっぱり 

  • やわらかいホットケーキです。a~cのどのオノマトペを使ったら、やわらかさが伝わりますか。

a. ふわっ  b. パリッ c. カリッ

  • 【学生】日本語のレシピサイトの一つで、紹介したオノマトペをいくつか(けん)して、どんなレシピがでてくるかを観察します。
  • 【学生】以下について話し合います。
    • どうして日本語の料理・レシピでオノマトペがたくさん使われると思いますか。どんな効果があると思いますか。
    • あなたはオノマトペを使っているレシピと、使っていないレシピとどちらがわかりやすいですか。

実際に出た意見の例です。

  • オノマトペを使うことで、美味しい様子を描写することができ、皆にもっと食べたいと思わせることができる。
  • その料理は食べたことがない人は、オノマトペや写真を見て、その料理の食感や見た目を想像できる。

3. タスクの提示

  • 【教師】以下のタスクを提示します。

地域の国際交流フェスティバルで、いろいろな国・地域の料理を紹介するイベントをすることになりました。そのときに、来客者に料理のレシピを配布資料として配ります。あなたは、紹介したいレシピを翻訳します。

  • 【学生】各自、自分の好きな言語で、翻訳したいレシピを探してきます。

4.自分の選んだレシピの分析・翻訳の前準備

  • 【学生】それぞれが持ってきたレシピをペア・グループで紹介し合います。以下のような表を使って、それぞれのレシピサイトの読み手や語彙表現を分析します。
  • 【学生】ペアまたはグループで翻訳前に以下の点などについて考えます。
    • 翻訳したレシピは、国際フェスティバルの来客者に配布資料として配ります。翻訳レシピのレイアウトはどうしますか。どうやったら読み手がわかりやすい/読み手にアピールできますか。写真の大きさはどのくらいにしますか。
    • 原文のレシピの中に、翻訳レシピに入れなくてもいい情報がありますか。どうしてですか。
    • 原文のレシピにはないけれど、翻訳レシピの配布資料に入れた方がいい情報がありますか。どうしてですか。
    • 「作り方」を説明するとき、どんな動詞のフォームやことばを使いますか。
  • 【教師】話し合いの内容をまとめます。
  • 【教師】オノマトペを使って自分の選んだ料理をアピールする文を書いてみるように伝えます。
    • レシピでよく使われるオノマトペ一覧を配布します。

以下はオノマトペ一覧の例です。

  • 【学生】自分の紹介したい料理で使えそうなオノマトペを選び、意味を辞書で確認します。また、日本語の料理サイトでそのオノマトペを検索して、そのオノマトペを使っている料理の写真を探します。写真は自分が思っているような料理かを確認します。
  • 【教師】もし適切なオノマトペが見つけられずに困っている学生がいたらサポートします。
  • 【学生】オノマトペを使った自分のレシピをアピールする文を書いた後、ペア・グループで見せ合います。
  • 【教師】何人かの学生の例をクラス全体で共有します。

5. 試訳・最終版の提出

  • 【学生】自分のレシピの試訳を作成します。
  • 【学生】試訳を読みあって、わかりにくいところなどをコメントし合います。
  • 【学生】コメントをもとに、レシピのハンドアウトを書きなおし最終版を提出します。
    ※翻訳するだけでなく、自分がそのように答えた理由も書きます。翻訳だけでなく理由も書かせることで、言葉の選択について考えさせることができます。

参考文献

  • Gyogi, E. & Iwasaki, N. (2023) Plurilingual and pluricultural approaches to teaching of Japanese ideophones (mimetics): Translating recipes of favourite foods into Japanese. Paper presented at the 20th AILA International Congress in Lyon, France.

こんな先生・活動にお勧めです!
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オノマトペは、レシピや広告、小説などの特定のジャンルで頻出し、読み手の心情に訴える重要な語彙になっています。ただ、オノマトペは上級でも使用が難しいと感じる学生が多いようです。

この活動では、母語等のレシピの比較をまず行うため、日本語のレシピの中でのオノマトペの役割や効果について理解を深めることができます。

また、効果を理解した上で、オノマトペを産出することもできる活動になっています。
中級後半以上でオノマトペについて導入するのにいいアクティビティです。