ライフステージ別の「タイムトラベル・言語ポートレート」を描いてみよう

アクティビティのねらい・概要

ねらい

このアクティビティでは、言語ポートレートを使って、過去・現在・未来の自分について考えます

ライフステージ別の自分を、言語を通して可視化することができます。

言語ポートレートを使って言語観を内省しよう』の活動と合わせてお使いください。

概要

目標
  • 過去・現在・未来の自分の言語使用や言語アイデンティティについて考えることができる。
学生の日本語力 問わない
その他の言語力

日本語以外の言語でディスカッションをする場合は、教師・学生ともにその言語で中級後半(B2)以上

所要時間

30分~1時間 
おすすめクラス 既に言語ポートレートを描いたことのある学生が、「今までの自分」と「これからの自分」を展望する際のステップとして活用するのがおすすめ

手順

ロードマップ

1.言語ポートレートの説明

  • 【教師】以下のように、言語ポートレートを説明します。  

【言語ポートレートとは】

  • 言語ポートレートとは、いろいろな言語と自分との関係を表現した自画像のことです。
  • 今の自分にとって、それらの言語はどういう役割か、からだの部分のはたらきにたとえて、からだの形の図に描きこみます。

【言語ポートレートの例】

  • 私の目、口、耳、手には英語と日本語を書き入れました。留学が終わってからも日常的に英語に触れていたいので、独り言や海外ドラマ、友人とのチャットなどを通して英語を意識的に使っているからです。
  • 夢を見るときも、英語の時も日本語の時もあるので、脳みそも英語と日本語にしました。        
  • のパートには茨城弁と書き入れました。私は茨城県出身で、自分ではあまり気が付きませんが、語尾上がりなどの訛りがあるらしいからです。           
  • お腹の部分には今までにかじったことのあるアラビア語、中国語、スペイン語、韓国語と書きました。どの言語も話せるレベルまでは到達しておらず「消化不良」だから胃のあたりに書きました。

2. タスクの提示:タイムトラベル・言語ポートレートを描いてみよう

  • 【教師】以下のタスクを紹介します。

皆さんの体の中には、どんなことばがありますか? ことばは、皆さんといっしょに変わっていきます。今日は『過去』『現在』『未来』の3つのシルエットを使って、あなたのことばの旅を絵に描いてみましょう。

  1. 【ステップ1:過去】5年前(あるいは日本に来る前)の自分
    • 指示の例:「5年前の自分を思い出してください。主に使っていたことばは何ですか? 家族と話すとき、勉強するとき、夢を見るときなど、そのときのことばを『色』や『形』にして、シルエットの中に描いてみましょう。」
    • 問いかけの例:「そのことばは、体のどのあたり(心、口、手など)にありましたか?」「当時の自分にとって、そのことばはどんな質感(温かい、硬い、光っているなど)でしたか?」
  2. 【ステップ2:現在】今の自分
    • 指示の例: 「今のあなたはどうですか? 日本語を学んでいる、今の自分を描いてください。」
    • 問いかけの例:「新しく増えたことば(日本語や方言、専門用語など)はどこにありますか?」「複数のことばが混ざっている部分はありますか?」「今はあまり使っていないけれど、大切に持っていることばはありますか?」
  3. 【ステップ3:未来】10年後の自分
    • 指示の例: 「10年後の自分を考えてみましょう。どんな場所で、誰と、どんなことばを使っていますか?」
    • 問いかけの例:「これから新しく出会いたいことば、もっと使いたいことばは何色ですか?」「未来のあなたは、ことばを使ってどんな新しい自分(役割や職業など)になっていますか?」

【指示するときのポイント】

【多様性を認める】 「上手な絵を描くこと」が目的ではなく、「自分の中にある多様なリソースに気づくこと」が目的であることを強調してください。言葉で表現しにくい感情を、色や線で表現することを促します。

【欠如ではなく豊かさとして捉える】 「日本語がまだ足りない」という欠如モデルではなく、「日本語というリソースが、既存の言語とどう関係し、自分を豊かにしているか」という複言語的な豊かさに焦点を当てたフィードバックが効果的です。

  • 【学生】指示に従って言語ポートレートを完成させます。
    ※教室内でやる場合は、各ポートレートに「5分」など目安時間を作るとよいです。

3. ディスカッション

  • 【学生】2人~4人ほどのペア・グループになります。
  • 【学生】自分の描いた言語ポートレートを、1人5分ほどで、ペア・グループメンバーに発表します。特に、以下の点を話してもらうようにします。
  1. 【場所や色が変わった理由】
    • 前は『心』にあった言葉が、今は 『足』になるなど、ことばの場所が変わった場合、どうしてですか。
    • 5年前は『青』だったのに、今は 『赤』に なるなど、色が変わった場合、どうしてですか。
  2. 【未来のポートレートについて】
    • 『未来』のポートレートの中で、一番「楽しみ」「わくわくする」と思ったのはどこですか。
    • 『未来』のあなたは、その言葉を使ってだれと話したいですか(家族、仕事の人、まだ 会ったことがない 友達など)。
  3. 【日本語について】
    • 日本語は体のどこにありますか。今のあなたにとって、日本語はどんな『感じ』ですか(例:あたたかい、かたい、きらきらしているなど)
    • 10年後の絵では、日本語はどんな役割になっていますか。
  • 【学生】各学生の発表が終わったあと、以下のような点について、自由に話し合います。
  1. 似ているところについて:
    • あなたのポートレートとクラスメートのポートレートで、色(または形)の使い方が似ているところがありますか。似ている場合、どうしてその色を使ったのか理由を聞いてみましょう。
  2. 面白い使い方について
    • クラスメートの絵をみて「おもしろい」と思ったところはありますか。自分にはないアイディアについて話し合いましょう。
  • 【教師】いくつかのグループに話し合った内容を紹介してもらいます。

参考文献

  • Busch, B. (2012). The linguistic repertoire revisited. Applied Linguistics, 33(5), 503–523. https://doi.org/10.1093/applin/ams056

こんな先生・活動にお勧めです!
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学習者が持つ多様なことばの資源を「豊かさ」として可視化し、一人ひとりのアイデンティティを大切にする活動です。クラス内の相互理解を深めたいときはもちろん、学期の節目などに将来のビジョンを描いてほしい場面でも、ぜひご活用ください。言葉を「色」や「形」で表現するため、日本語のレベルを問わず、誰もが自分自身の「ことばの旅」を再発見するきっかけになります。