歌の翻訳を通して、文化について考えよう

アクティビティのねらい・概要

ねらい

このアクティビティでは、日本語母語話者とともに、複言語で歌を翻訳します。

翻訳を通して、文化背景の知識が歌詞の解釈に差異をもたらすことや、語彙の選択による言外の意味(感情・雰囲気)があることについて考えられます。

概要

目標
  • 自分の選んだ(日本語でない)歌の作られた背景や意味などについて、日本語母語話者やクラスメートに説明できる。
  • 日本語母語話者やクラスメートと協力して、日本語やその他の言語に歌を翻訳できる。
学生の日本語力 中級後半(B2)以上
その他の言語力 特に要件なし

所要時間

4時間~6時間(翻訳量を変えることで調節可)
おすすめクラス 日本語母語話者と一緒にやるアクティビティとして取り入れるのがおすすめ!

手順

ロードマップ

1.事前課題

  • 【教師】何人かの学生に、母語の歌(タイ語・広東語など)を探してきてもらう。      

どの歌を選ぶかは学生に任せます。

ただ、その国・地域で知名度のある曲であること・歌いやすいことが望ましいです。

2. タスクの提示:文化を翻訳しよう

  • 【教師】以下のタスクを提示します。

歌の一番に日本語の歌詞を付けて、歌おう!    

  • 【学生】日本語母語話者とペアまたはグループになります。学生が事前に選んだ歌の一番をグループで一緒に聞きます。そして、どう思ったか・どんな印象を持ったかについて話します。

3. グループワーク

  • 【学生】歌を選んできた学生が歌の説明をします(どんな歌か、いつの歌か、どのくらい有名か、など)。
  • 【学生】歌詞をシェアします。そして、自動翻訳(DeepLなど)を使って大まかな意味を調べます。
  • 【学生】日本語の歌詞をつけてみます。
  • 【教師】以下のような点について、学生に歌詞をつけながら話し合わせます。
    1. ○○と△△の表現・語彙選択の違いは何?
    2. ○○ってどういう意味?
    3. どうしてその表現を使った?   

実際に完成した訳として、以下があります。

グループは、学生2名(母語が広東語の学生と英語の学生)・日本語母語話者2名の4名のグループで、日本語・英語に翻訳しました。

※原曲YouTubeリンク:張國榮 由零開始 MV (張國榮/張曼玉/鍾楚紅演) (Leslie Cheung/Maggie Cheung/Cherie Chung) https://www.youtube.com/watch?v=MALiry6e7bg

原曲 広東語日本語訳 英語訳
即使 其實有點不依たとえ別れがつらくてもBeing apart is never easy
Will you remember me      Will you remember meWill you remember me 
就算是不得已仕方がないけれどWe are powerless to resist fate
如若愛我 盼妳可以給我試一次私を愛してくれるなら、私を信じ続けてほしいPlease let me try
來日妳我再度相見 仍是舊日動人笑面さよならじゃなくて笑顔でまたねThis is not goodbye; Until then, please keep that familiar smile
給我熊熱眼光一遍 一千遍暖かいエールを送り続けて欲しいAnd the warmth of our eyes will meet once again

4. クラス全体ディスカッション

  • 【学生】(歌を歌うことに抵抗がない学生の場合)クラスの前で原曲・日本語の歌詞を歌えるように練習します。
  • 【学生】発表前に、ほかのクラスメートに原曲のリンクと自分たちの翻訳を共有します。そしてほかのグループの歌詞を見て、質問を考えておきます。
       例)なぜその表現を選んだのか
  • 【教師】発表後、一人ずつ学んだことを紹介させます。
    • 学んだこと・気づいたこと・驚いたこと・不思議に思ったこと
    • 一つ、二つのことを選んで、どうしてそう思ったのか、詳しく説明する

以下は、実際に出た意見の例です。

参考文献

  • 行木瑛子 (2021). 複言語主義の日本語教育における学生の学び-多様な言語資源を生かした翻訳活動の実践から-. 第二言語としての日本語の習得研究 24, 86-103.

こんな先生・活動にお勧めです!
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日本語母語話者との活動を取り入れたいと思っている先生にお薦めです。
学生は、歌の翻訳を通して、自分のことばや文化について説明することができます。
また、同じ歌詞から様々な解釈が出てくることから、文化・言語背景による違いを意識できます。
感情・雰囲気をどう表すかなどの翻訳の難しさを実感することもできます。